たちばな慶一郎 過去の国政報告

国政報告(第100号)

2011年8月26日(金)

 菅総理の「正式な」退陣表明で、奇しくも第100号となりました。前号に記した通り、23日(火)、再生エネルギー買取法案が自民・公明・民主の三党修正で衆議院を通過しました。私も西村康稔議員とともに修正案提出者6名の中に加えて頂き、24-5日(水-木)と参議院の経済産業委員会の審議に臨み、答弁も経験できました。本日、特例公債法案とともに参議院本会議で可決成立し、かくて、ようやく冒頭の退陣表明に至りました。

 1月24日から3月11日の東日本大震災の発生を挟み、220日間続いた通常国会も31日(水)には幕を閉じます。3月当初、予算案と税制改正法案や特例公債法案を切り離し、予算のみの成立を選択した時点で、「ねじれ国会」の下での菅政権の命運は尽きつつありました。大震災への対応で当座は延命したものの、野党側への働きかけは谷垣総裁への突然の電話での入閣要請など、手順が稚拙で実を結びませんでした。やがて民主党内部でも菅総理の政権担当能力に見切りをつける動きが広がり始めました。6月2日には内閣不信任案があわや可決という情勢に至り、「いずれ若い方々にバトンタッチしたい」とのご自身の表現で、菅退陣への流れが決定的となりました。それからまた3か月、菅氏自身は「やりたかった事」が幾つも成就したと思っているようです。しかし現実は、「菅抜き」で与野党幹部が精力的に協議し、震災対策の様々な議員立法を幾つも成立させた結果です。この間、2年前の民主党マニフェストの主要施策も、高速道路無料化や子ども手当など、抜本的な見直しが表明され、与野党幹事長・政務調査会長レベルの信頼関係で特例公債法案の成立に立ち至った訳です。

 菅総理の東日本大震災への日夜の対応には頭の下がる思いですが、内政・外交の重要課題は手付かずでした。何を成し遂げたいのか、「志」が振れ続けた点は厳しく批判します。後継の民主党代表は、本日時点では5人の候補者で争われる見込みですが、鳩山・菅内閣に続く「第三幕」を迎えるに当たり、総理に求められるものは「明確な目標(志)とそれを成し遂げるための覚悟」でしょう。参議院で与野党が逆転している「ねじれ国会」であるだけに、日々の国会運営における与野党間の意思疎通に重きを置くことも必須条件です。

 29日(月)に選出予定の新代表がこの条件を満たす人物であるかどうか、それによって、9月以降の政治の展開は左右されるものと思います。あっさり行き詰まって解散・総選挙に至るのか、3次補正を含め、被災地対策に一定の目途をつけるまで続くのか、さらに踏み込んで内政・外交の重要課題を一つでも解決できるのか。「粘り強い政治」の実現こそ、政治への信頼を取り戻す王道だと考えます。そのことを、自分自身の政治活動にも課しながら、101号以降に臨みます。

国政報告(第99号)

2011年8月19日(金)

 旧盆でお休みを頂き、二週間ぶりの国政報告です。この間、子ども手当の見直しに続いて再生エネルギー買取法案についても自・公・民の三党合意が成立し、菅総理が自ら掲げた「退陣三条件」が達成される運びとなりました。6月2日の不信任案否決以来、2か月半でようやく首相の進退が明確になり、今や民主党の後継代表を巡る争いが新聞の政治面の主要記事となっています。この5年間で5人の総理が就任しては退陣を繰り返し、民主党に政権交替してから早くも3人目の首相が選ばれようとしていますが、当面する課題は深刻になるばかりです。候補者が乱立しそうな気配ですが、新首相を待ち受ける情勢が厳しいだけに、よほどの決意が必要だと思います。来週になれば、代表選の日程も確定してくるでしょうし、9月以降の政治日程も見えてくるものと思います。

 政権の話は次回に譲り、旧盆を挟んだ国会の動きを振り返ると、所属の総務委員会では、11日(木)に、国や県の仕事を市町村に移管し、様々な法律上の義務付けを緩和する「地方分権二次一括法」が可決され、参議院に送られました。併せて、私も関わった大震災関連の議員立法が可決されました。平成の大合併によって誕生した市町村が合併後10年間発行できる合併特例債の発行期間を、被災地について5年間延長する法案です。自民党から提起し、全党の賛同を得て、原口総務委員長の提案としてまとまりました。党内の役割分担で、自治体経験のある私が庶務を任せられ、衆議院法制局の職員と原案を打ち合わせ、党の役員会での説明をしただけに、衆議院を通過してみるとさすがに達成感がありました。この発行期間の延長は、富山県内を含め、被災地外の市町村からも要望が強まっており、今回の議員立法を受けて、片山総務大臣はやがて特例措置を全国に広げる方針を明らかにしています。この立法は、先輩・同僚議員の配慮があってこそ、私が携わることができたものですが、一面、立法府にあって法に基づく具体的な政策展開を成し得たことは、得難い経験でした。

 一方、経済産業委員会は、民主党の子ども手当の政策ビラを巡って日程がズレ込んだものの、23日(火)には再生エネルギー買取法案が三党合意に基づく修正を施した上可決、参議院に送付される予定です。様々なエネルギー源による電気の買取り価格を定める手続きを、国会が同意する委員で構成される委員会の議を経ることとするなど、内容をより慎重なものに変えており、評価できる修正だと思います。 26日(金)までには、公債特例法と併せて参議院での成立が見込まれており、かくて来週末には「退陣三条件」が揃う段取りとなっています。そこから日本の抱える課題にどう立ち向かっていくのか、鳩山・菅政権に続く「第三幕」で自分も頑張ります。

国政報告(第98号)

2011年8月6日(土)

 今週も、すっきりしない天候が続く中、国会では東日本大震災関連の特別立法の審議が進められる一方、子ども手当見直しの与野党協議が断続的に行われ、報道の通り、児童手当に戻して所得制限も導入することで、自・公・民の三党合意が成立しました。

 私の所属委員会では、総務委員会で原発事故のために避難を余儀なくされている地域を対象とする2法案が通過しました。当面使用できなくなっている土地・家屋・自動車に係る税を免除する法案と、避難されている方々が住民票を移さなくても避難先で住民サービスが受けられる法案です。いずれも、自治体が減収となったり、新たに支払う経費については国が負担する内容となっています。原発事故については、避難されている方々への手当てや放射能の対策など、これまでに経験したことのない事態への対応が続いています。役所も国会も、今なすべきことを着実に実行し、想定される事態を少しでも先まで見通す努力を傾注していかなければなりません。

 被災地全体を通じて、仮設住宅の建設と避難所の解消、住宅地の回りのガレキ撤去、二重債務の負担軽減など、復旧策の柱となる事項が、遅まきながら前進しつつあります。今月は、第三次補正予算に向けて、復興基本方針をどの施策から具体化させていくかを行政も与野党も検討しなければなりません。これからは、産業の再興と雇用の確保・創出、そのために必要な社会資本の再整備を進め、東北地方の新たな発展方向を明らかにしていくことが必要です。

 通常国会の会期も後3週間余りとなりました。子ども手当の見直し合意に基づいて、今後の経過措置を定める法案を、地方側と協議の上、成立させなければなりません。そして、特例公債法案、再生エネルギー買取法案の扱いが焦点となります。この間、米国で財政危機が表面化し、日本も急激な円高に見舞われるなど、経済面でも予断を許さない情勢となっています。平成24年度予算の編成に向けて、「税と社会保障の一体改革」も成案を得て具体的行動に移らなければ、やがて日本の国債も市場の信任を得られなくなる事態も起こりかねません。早期に内閣の体制を立て直し、恐らくは1か月遅れの9月末となるであろう第三次補正予算の編成と新年度予算の概算要求作業を済ませ、10月には臨時国会を召集する、そんなスケジュールをしっかり立てて国を前進させなければなりません。

 従前から述べているように、菅内閣に当初から欠落しているのは、こんな大局的な日程管理の能力です。それは、「何をなすべきか、そのための覚悟はあるのか」という、揺らぎのない信念の欠如に行き着きます。困難な現実に揺るぎない姿勢で立ち向かう、そんな新体制の実現を念じ、菅総理の退陣の決断を待ちつつ、旧盆を迎えようとしています。

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