2016年6月

国政報告(第335号)

 6月22日(水)に第24回参議院通常選挙が公示、18日間の選挙戦がスタートしました。18歳の方から選挙権を持つ事もあり、19日(日)には富山市で県連学生部の発足式があり、2020年経済構想小委の中間報告、「レールからの解放」を元に講演させて頂きました。18日(土)に南砺市吉江地区後援会に出席したほか、地元での応援活動が主体の毎日なので、国政報告は前国会中の党政務調査会での活動を中心に綴っています。

 昨年秋から与党内で検討が進み、地元でも関心が高かったテーマとして、北陸新幹線の敦賀以西のルート決定問題があります。昨春に長野・金沢間が開業し、沿線地域に大きな波及効果をもたらしており、着工済みの金沢・敦賀間の一日も早い供用と、敦賀以西のルート決定・着工が強く望まれています。このため与党内に、敦賀までの工事前倒しと敦賀以西のルート検討の二つのプロジェクトチーム(PT)が結成され、富山県以西の関係府県の国会議員がメンバーとなり、精力的に調査・研究を進めました。富山県からは、工事前倒しは田畑議員、ルート検討は私が加わりました。

 新幹線は、昭和40年代に作られた全国計画に基づき、整備5線と呼ばれる東北・上越・北陸・九州・北海道新幹線が先行的に逐次工事が進められてきました。北陸新幹線については、富山から先は「福井県小浜市付近を経由し、大阪に至る」ルートとの表現で計画され、今日に至るまで40年以上経過しています。この間、整備凍結や、在来線を活用したスーパー特急方式での簡易な整備など、方針が二転三転しながらも、地元の先人の粘り強い運動の成果もあって、フル規格での整備が進められてきました。

 金沢までの開業、敦賀までの工事前倒しと、整備に進捗が見られた事で、大阪まで整備し、北陸と関西を新幹線で結ぶ必要性が、北陸側のみならず関西でも痛感されるようになり、今回の検討に至りました。PTでは、国土交通省からこれまでの経緯について説明を受け、沿線の自治体、運行主体となり得るJR西日本・東海、学識経験者の意見をヒアリングし、ルートを三案に絞り込みました。

 一番短いのが、米原駅で東海道新幹線に接続する「米原ルート」。滋賀県、石川県の希望です。二番目が、小浜付近から京都駅の地下に乗り入れ、東海道新幹線とは別線で新大阪駅に至る「小浜ルート」。JR西日本の提案で、福井県、大阪府が賛同しています。三番目が小浜から舞鶴へと大回りし、京都駅に乗り入れて新大阪駅に別線で至る「舞鶴ルート」。京都府の希望です。ちなみに富山県は、「乗り換え無しに京都・新大阪に早く行ける」ルートを希望されており、米原で乗り換えが発生するか否かで、「米原ルート」か「小浜ルート」を希望する理屈になります。

 PTでは、関西国際空港へのアクセスを別途検討すべき事、「舞鶴ルート」については、京阪奈学研都市付近を経由する可能性も検討すべき事を付記し、4月末に国土交通省に詳細な調査を依頼しました。ほぼ半年で結果を出すとの事で、これを踏まえ、得失を勘案したルート選定は、稲田政調会長が「年内に行う」と明言されています。米原駅での乗り換えは現状では避けられないものの、リニア中央新幹線が整備されれば事態は変わる可能性があります。リニア新幹線も整備前倒しの議論があり、その推移もにらんで、年末には重要な局面を迎えます。なお、ルートの最終決定は、PTではなく、上部組織である「与党整備新幹線建設推進PT」を中心に行われると思います。

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国政報告(第334号)

 引き続き梅雨空の下、富山で参議院選挙の応援活動を続けています。この間、12日(日)は、高岡高校の近畿圏同窓会に出席するため、大阪に日帰りで出かけました。総会に先立つ講演会では、東京と富山を行き来しながら文化マネジメント活動に携わる林口さんが講師を務めました。美術館の企画展、歌手のコンサート、寺院の文化活動など様々なジャンルのコーディネートの傍ら、地元では日本遺産に選定された高岡のPR事業を請け負っている由。フリーペーパーの制作や大手雑誌記者の受け入れツアーなど、地域文化の発信に貢献されています。地方創生が国の重要な政策課題となる中、北陸新幹線も活用する林口さんのような「二拠点活動」をする方が増えることを期待しています。また、地元にUターンされる人材を活かし、地域活動の輪にうまくネットワークしていけるように、地域の側でも受け入れ態勢を整えることが大切だと感じました。

 週明けの13日(月)の午後に上京して各省庁からのレクを済ませ、あとは県西部中心の毎日です。霞が関は幹部の人事異動が進む中、消費税増税延期の決断を受け、限られる財源の下で社会保障の改革や制度設計をどう進めるか、早くも29年度予算に向けた検討が始まっており、党財政再建特命委員会としても選挙後にはフォローして行かなければなりません。また、舛添都知事の政治資金等の問題が都議会の審議で深刻になり、15日(水)には辞職に至りました。「想定外」の事態も生じる中、参議院選挙に向けては緊張感を持って進まなければなりません。

 さて、本号では、林口さんのお話にちなみ、「文化GDP」について紹介したいと思います。我が国には素晴らしい文化財がたくさんあり、これまでもその保存・修復は文化庁を中心に粘り強く取り組まれています。これを一歩進めて貴重な観光資源として活かすべきとの意見が、昨年末から党内で強く出てきました。折しも、訪日外国人客数が二千万人の大台に近づき、政府も新たに四千万人の目標を設定しようとしており、日本らしさを強調できる文化財の役割が注目されています。さらに、安倍政権は「新三本の矢」として、名目GDPを600兆円まで到達させると打ち出しており、文化の分野でも、様々な付加価値により、GDPの成長に寄与できるものと考えられます。また、文化庁も京都への移転の方針となり、新たな機能を持って文化行政を展開したい意向が出てきました。

 以上のような背景を受けて、党文化伝統調査会の小坂会長や馳文科大臣のご指導の下、堂故政務官とも連携しつつ、今春、「文化GDP」のプロジェクト・チームを立ち上げました。私が座長、実質的な推進役の事務局長には滋賀県選出の新進気鋭の二之湯武史参議院議員がつき、有識者ヒアリング等の検討の末、文化GDP拡大に向けた提言をまとめ、政府に提出しました。文化財修理に観光にも資する視点を入れること、修理自体を産業と位置づけること、ソフトな文化活動をコーディネートする人材を育成すること、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、文化面の発信を強化すること、等々早速骨太の方針にも反映させることができました。

 参議院選挙後もさらに文化GDPの様々な側面を検討し、新たな提言につなげていきたいと考えています。

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国政報告(第333号)

 通常国会を終え、梅雨晴れの富山で参議院選挙の応援活動に入っています。それに先立ち、2日(木)は東京で県人会の百周年記念式典に出席し、3日(金)に富山に戻りました。4日(土)は第三選挙区女性部総会、5日(日)は党氷見市連総会射水市作道支部総会に顔を出しました。6日(月)、7日(火)と再度上京して残っていた各省庁からのレクをこなした後は、県西部でのあいさつ回りを中心に活動しています。

 消費税増税の平成31(2019)年10月までの延期についての安倍総理の決断については前号で触れました。平成32(2020)年度予算のプライマリーバランス黒字化の財政再建目標は堅持するとのことで、景気浮揚を最重点に、歳出は見合いの歳入に応じて執行していくことが基本になるものとみています。当面、一億総活躍社会実現に向けた、保育士・介護士の給与水準の改善について、安定財源を充てる事が急務です。秋の臨時国会に向けて作業が進む経済対策・公共事業についても、必要な財源の検討が必要です。

 総理は、アベノミクス三本の矢(金融緩和、財政出動、成長戦略)をさらにふかして、国際経済の落ち込みリスクに立ち向かう考えを表明されましたが、その中で私が懸念するのが、日本銀行の「異次元の金融緩和政策」の持続可能性です。日銀は3年前の平成25年春、黒田現総裁の就任とともに、消費者物価上昇率を2%台に押し上げ、我が国経済をデフレ状態から脱却させるため、「異次元の」金融緩和策をスタートさせました。その主力は、国債を年80兆円のベースでの買い入れです。これで、市中にお金をふんだんに供給し、その大半は金融機関の日銀への預金で戻っているものの、長短金利を低めに誘導し、民間企業の投資を促す姿勢を鮮明に打ち出してきました。これと国の補正予算(財政政策)、規制緩和等の成長戦略が有機的に作用し、為替や株の相場を劇的に改善し、景気浮揚と雇用創出、賃金引き上げを実現してきたのがアベノミクスと呼ばれる経済政策です。

 一方、原油を中心にエネルギー価格が思いのほか低迷し、少子高齢化の下で国内消費が盛り上がりづらいことなどを背景に、消費者物価上昇率は0%台前半に留まっています。このため、日銀は「追加緩和」として、今年初めからは「マイナス金利」まで導入しています。この間、日銀の国債保有高は逐次増加し、直近の平成28年5月末では370兆円に達しています。来年5月には450兆円、再来年5月には530兆円、と機械的に計算できるのですが、そのように買い進めば、「国債の中央銀行引き受け」という問題が生じてきます。これでは、国の借金を中央銀行がお札を刷って引き受けている事態と見なされかねず、早晩、日銀の買い入れはストップせざるを得なくなると思います。その際に、「三本の矢」をどのように再構築するのか、政策判断を迫られるタイミングは、消費税引き上げの前に到来してしまうのではないか、この事を心配している所です。この懸念は、5月31日(火)の党政調全体会議で発言しています。来週以降も、この半年の政務調査会での活動を土台に、様々な政策テーマについてお伝えしていきたいと思います。

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国政報告(第332号)

 6月1日(水)、通常国会の会期末は、安倍総理が記者会見され、消費税の10%への増税を明29年4月から、平成31年10月まで2年半延期するとの表明で幕を閉じました。永田町では、衆参の同日選の可能性が最後まで語られた上、G7の伊勢・志摩サミットから総理の最終決断まで、今回も驚きの連続の展開となりました。

 米・オバマ大統領の広島訪問を含め、サミットが成功裏に閉幕した先月27日(金)の夜、総理と麻生財務大臣、谷垣幹事長、菅官房長官の四者協議から事態は大きく動き出しました。2年半延期を打診する総理に対し、麻生大臣は反対され、その場合は衆議院を解散して信を問うべきとの意見を述べられた由、翌28日(土)の新聞朝刊で報道され私も初めて知る所となりました。29日(日)は党県連大会と政経セミナーが予定されており、麻生大臣と谷垣幹事長に来県頂く予定は早くから決まっていました。セミナー来賓としてのご挨拶が俄かに全国的注目を集める事になりました。

 先立って、28日は富山新港で国土交通省の多目的国際ターミナル(コンテナ埠頭)の延伸工事の着工式典に出席し、午後は高岡市野村地区で、高橋市長、地元の坂林市議との合同報告会に出席しました。国政報告では、報道を受け、消費税と衆院解散がどうなるか、確たることは言えないと述べるしかありませんでした。

 明けて29日、麻生大臣は改めて増税延期に反対であり、延期の場合は解散すべきとの意見を述べられました。谷垣幹事長は麻生大臣に同調されながらも、「進むも地獄、退くも地獄、厳しい判断であり、総理の決断を待つ」との発言で、週明けからの調整が焦点と理解しました。併せて、桜井よしこ先生に講話頂き、サミットの意義から現下の国際情勢と我が国の取るべき施策について、深い洞察に裏付けられたお話しが聞け、有意義でした。

 30日(月)はかがやき536号で新高岡駅から上京し、夜は県内10市の市議会議長さん達との懇談会に臨みました。31日(火)には、野党四党から内閣不信任決議案が出され、その本会議を15時半に控える形で、14時から政調全体会議が急きょ開催され、総理のお考えに対する党内意見の集約が図られました。大勢は、総理の判断に従うものの、参院選を控え、増税延期の理由や社会保障費を中心とした歳出面の取り扱いについて、総理自ら明確な考えを述べて頂きたいとの意見でした。私も、日本銀行が年間80兆円の国債を買い入れる「異次元の金融緩和」で既に300兆円を超える国債を日銀が保有しており、31年10月まで続けるならば600兆円に達する事になり、その前には政策を変更せねばならないと思われる旨、注意喚起の意見を申し述べました。

 結局、不信任決議は夕刻に粛々と否決され、1日の13時からの本会議で会期末の手続き終えた後、18時からの総理記者会見で最終的に増税の2年半延期が正式に発表されました。安倍総理は、今回の決断が26年11月の判断とも異なる「新しい判断」とされ、このことについて、7月10日(日)投票の参議院選挙で国民の信を問う、と述べられました。全てが急展開の新たな局面ですが、与党の一員としてどう受け止めるか、来週からは富山を中心に活動しながら、自分の考えをまとめ、報告して行きたいと思います。

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